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培地学シリーズ16

 

 大川微生物培地研究所 所長 大川三郎

大川先生の略歴

https://www.facebook.com/ohkawa.saburo

 

 レジョネラ菌選択培地 ―CCVC添加BCYE寒天培地


はじめに

在郷軍人病(レジョネラ症)は肺炎を主徴とする全身疾患である。1977年にMcDadeらはその病気の原因菌がLegionella pnemophiliaであることを証明した。(その病型は劇症型の肺炎と一過性のポンティアック熱がある。レジョネラ肺炎は米国フィラデルフィアにおける在郷軍人会の集会(leigion)において、集団肺炎で発見されたことからLeigionella diseaseと命名された。ポンティアック熱は1968年に起きた米国ミシガン州のPontiacにおける集団感染事例にちなんで命名された。)レジョネラ属菌は、もともと土壌、水環境に存在する細菌である。しかし、快適な生活環境や水資源の節約のため、エアロゾルを発生させる人工環境(噴水、ビル屋上に設置された冷却塔、ジャグジー、加湿器)や循環水を利用した風呂が屋内外に多くなっていることなどが感染する機会を増やしている。この細菌に暴露されたすべての人が発症するわけではなく、細胞免疫機能の低下した人が発症しやすい。アメーバを宿主として増殖する。

レジョネラ菌の検出するための選択培地にはCCVC添加BCYE寒天培地、PAV添加BCYE寒天培地、PAC添加BCYE寒天培地、BMPAα寒天培地、GVPC寒天培地、MWY寒天培地、WYO寒天培地などがある。これらの培地の中で最も選択性に優れているCCVC添加BCYE寒天培地ついて紹介する。

 

oh16.jpg

 

CCVC添加BCYE寒天培地(Buffered Cystine Yeast extract with CCVC agar


1978年に、Weaverはヘモグロビン、アイソバイタルXを加えたミューラーヒントン寒天培地を用いてLeigionella pneumophiliaを発育することに成功し、ついでFeelyはWeaverの組成を改良し、水溶性ピロリン酸鉄、Lシステイン塩酸塩を用い、F-G寒天培地を開発し、レジョネラ菌の発育を改善させた。1979年にFeelyらは基礎培地であるミューラーヒントン寒天培地中のカゼイン水解物、牛肉エキスの代わりに酵母エキスをデンプンの代わりに活性炭に代えることによりさらにF-G寒天培地を改良したCharcoal Yeast Extract(CYE)寒天培地を開発した。1980年に,PasculleらはACES(N-2-アセトアミド-2アミノエタンスルホン酸)緩衝剤をくわえたBCYE寒天培地を開発し、この培地の開発によりレジョネラ菌の検出率が飛躍的に改良された。(感度)

さらにセファロシン、コリスチン、バンコマイシン、シクロヘキシミドを添加することによりレジョネラ菌以外の細菌、真菌の発育を抑制することが可能である。

 

1.組成(精製水1000mlに対して)

酵母エキス 10g
L-システイン塩酸塩 0.4g
ピロリン酸鉄 0.25g
ACES緩衝剤 10g
活性炭 2g
α―ケトグルタル酸 1g
寒天 15g
セファロシン 4.0mg
コリスチン 16.0mg
バンコマイシン 0.5mg
シクロヘキシミド 80.0mg

 

 H 6.9±0.05


2.原理

発育に必須な炭素源、窒素源は酵母エキスにより、レジョネラ菌が発育のために必須なLシステイン、鉄源の水溶性ピロリン鉄が含まれている。活性炭はレジョネラ菌に有害な物質の吸着作用を、ACES緩衝剤は発育に最良のpHを保持する。(特に本菌の発育pH域が狭いため)発育増強剤としてα―ケトグルタール酸が、レジョネラ菌以外の細菌、真菌の発育を抑制する選択剤が添加されている。

3.培地組成の役割

酵母エキス

一般的な細菌が発育するために必須の栄養素ではない。一般的にはペプトンの補助栄養剤として使用する。エキス類は不足した栄養分を補うことで細菌の発育を促進する。細菌の酵素作用を促進する作用(補酵素として)はビタミン類が豊富に含まれているためである。本培地での酵母エキスの役割は異なり、10g/Lを含有することにより発育に必要な窒素源、炭素源等の基礎的な栄養源となる。さらにビタミン等により酵素活性の促進作用により発育を高めることが可能となる。

L-システイン塩酸塩

アミノ酸の1つで、2-アミノー3-スルファニールプロピオン酸のことで、側鎖にメルカプト基をもつ。チオセリンとも呼ばれる。略号はCys。酸性下では安定だが、中性、アルカリ性では微量の重金属イオンにより容易に空気酸化されシスチンとなる。親水性アミノ酸、中性極性側鎖アミノ酸に分類される。含硫アミノ酸。タンパク質構成アミノ酸のひとつで、非必須アミノ酸,糖原性をもつ。レジョネラ菌が発育するための必須栄養分である。

ピロリン酸鉄

溶性ピロリン酸第二鉄(Ferric Pyrophosphate,solble)Fe4(P2O7)3・4Na3C6H5O7

淡黄色透明な薄片または顆粒状の砕片で、光により変化する。水溶液は弱酸性である。水に溶けやすく、エタノールにはほとんどとけない。ピロリン酸鉄はレジョネラ菌が発育するた-めに必須の成分である鉄源となる。

ACES緩衝剤

2-アセトアミドー2アミノエタンスルホン酸: 2{(Carbamoylmethyl)aminoethanesulfonic acid

ACES緩衝剤は培地pHのバッファー剤である。レジョネラ菌の発育至適pH域6.9±0.05と非常に狭いことが特徴である。試験材料を添加時、他菌がこの培地に発育した場合等は培地のpHが変動する。このpHの変動が起きたとき、レジョネラ菌が発育するpH6.9±0.05に維持する目的で添加されている。

活性炭

炭は木材などを加熱して作られる。炭の内部は微細な孔が無数にあり、孔の壁が大きな表面積を作る。炭に水を通すと、不純物が細孔に入って出られなくなる(不純物の吸着)ためにきれいになる。炭の表面積は1gあたり300-500mと言われている。活性炭は炭をさらに1000℃近い高温で加熱処理して作られ1gあたりの表面積は800-2000m2に達し、炭よりも圧倒的な吸着性能を誇る。活性炭は90%以上が炭素で、炭素に一部は酸素、水素との化合物となっている。灰分は原料固有の成分でNa、Si、K、Ca、Feが含まれている。さまざまな有害物質を取り除くことができる。レジョネラ菌に有害な代謝産物の過酸化水素を分解し、また二酸化炭素を吸着し、培地表面の電位を調節する。

α―ケトグルタル酸

ケト酸に一つでオキソグルタル酸ともいう。α―ケトグルタル酸とβ―ケトグルタル酸があるが細菌の発育の活性剤として使用されるものは、α―ケトグルタル酸である。無色の結晶で融点112℃。NADを補酵素として要求するイソクエン酸デヒドロゲナーゼにより、イソクエン酸から生成される。α―ケトグルタル酸はレジョネラ菌の発育促進作用を示す。

セファロシン・コリスチン・バンコマイシン・シクロヘキシミド

セファロシンは1962年リリー社が7-aminocephalosporanic acidにthiophene-2-acetic acidを作用させて合成したセファロスポリンC系抗生物質であるセファロスポリン剤の中で最初に実用化された半合成誘導体で実際の使用はナトリウム塩が用いられている。白色―淡黄色の結晶性の粉末で水に溶けやすく、エタノールに溶けにくい。黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌やサルモネラ菌、プロテウス・ミラビィリスに抗菌活性を示す。

コリスチンは1950年ライオン製薬でバチルスが産生する物質から発見された。日本では1951年硫酸コリスチンが医薬品として販売され、その後米国をはじめ海外に輸出された。

1960年から1970年にかけて用いられたが、副作用の頻度が高いこと、他に安全性が高い抗菌薬が開発されたことなどにより、その後日本では使用されなくなった。2015年、多剤耐性を有するグラム陰性菌(緑膿菌等)に対する抗生物質として見直され、改めて希少疾病医薬品として承認された。塩基性陽イオン性界面活性剤であり、細胞膜を合成阻害による殺菌的に作用する。緑膿菌を含むグラム陰性菌に対して優れた抗菌作用を示す。

バンコマイシンは1956年イーライリリー・アンド・カンパニーが開発されたグリコペプチド系抗生物質である。細胞壁合成酵素の基質であるD-アラニールーDアラニンに結合して細胞壁合成酵素を阻害し、細菌の増殖を阻止する働きがある。大部分のグラム陽性菌に殺菌できる。

シクロヘキシミドはStreptomyces griseusによって作られる真核生物のたんぱく質合成阻害剤である。シクロヘキシミドはたんぱく質合成の転位過程に干渉することでその効果を示し翻訳を阻害する抗真菌剤である。シクロヘキシミドは一般的にはin-vitroの研究にのみに使用され、ヒトの治療薬としては副作用の問題から適切ではない。抗真菌剤として農業分野で使用されてきた。これらの4種類の抗菌物質により、レジョネラ菌以外の細菌、真菌類の発育を抑制する。

寒天

寒天は培地の固形化剤であります。原料は海藻であるテングサ、オゴノリです。培地用としてはオゴノリが利用されております。主成分はアガロースで糖が直鎖状につながっており、細菌には分解されにくい構造になっております。寒天の内部に水分子を内包しやすく、多量の水を吸収してスポンジ状の構造を形成します。水分を蓄えることができ、栄養分をその中に保持しておける。そのため、微生物の培地に適します。寒天培地を加熱していくと解ける温度を融点、また解けた寒天が固まる温度を凝固点といいますが、寒天は融点が85~93℃、凝固点が33~45℃です。これも寒天に混ぜる成分により変動します。良い培地か否かは寒天の品質で決まります。品質とは透明度、ゼリー強度、粘度、保水力が優れていることです。

 

4.使用法<環境水からレジョネラ菌の検出> 沪過濃縮法

①検水500mlを直径47mm、孔径0.2μmのポリカーボネートメンブランフィルターで吸引沪過する。

②フィルターを剥がし5mlの滅菌蒸留水にひたし、強く手で5-10分振とうするか、ボルテックスミキサーで1分間洗浄した液を用いる。

③CCVC添加BCYE寒天培地に接種する。

④36℃、7日間 好気性培養する。

⑤発育コロニーを鑑別する。成書に従い同定試験を実施する。

 

5.培地の限界

1)VNC(Viable but non-cultureble,)状態のレジョネラ菌は発育できない。

近年レジョネラ菌もVNC状態をとりうる細菌の1つとみられている。培養不能状態で生息している細菌がどのような機序で培養可能状態にもどるのか、また逆の経路をとる引き金が細菌の飢餓状態なのか、注目される。

2)一部のグラム陰性桿菌の発育が阻止できない。

抗菌剤であるコリスチン耐性のブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌(Pseudomonas spp等)が発育する。本培地に発育すると目的のレジョネラ菌よりも早く発育し、しかも大きなコロニーを形成するため、オーバーグロスする。そのために試料中に存在しているレジョネラ菌が見逃される。

3)培地中の抗菌物質に感受性のあるレジョネラ菌は発育しないことがある。

培地に含まれている抗生物質に感受性のレジョネラ菌が報告されている。検査の時は選択剤を添加されていないBCYE寒天培地も併用する必要がある。

参考文献; 

1)McDade,Shepard.Fraser et.al 1977 , N.Engl.J.Med.297:1197

2)Edelstein 1985 manual of Clinical Microbiology.4th ed ASM.Washington.DC

3)Weaver.  1978.  DHEW,CDC.Atlanta.

4)Feely,Gibson.Gorman et.al 1979. J.Clin.Microbiol..10:437

5)Pasculle,Feely,Gibson et.al 1980. J.Infect.Dis.14:727

6)森本 洋 環境感染学会誌 25:8-13.2010

7)森本 洋 北海道立衛生研究所報、58:51-54,2008

8)春日 修 感染症学会誌、76:41-50,2002

9)森本 洋 北海道立衛生研究所所報、59:73-74,2009

 

 

 

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