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培地学シリーズ17

 

 大川微生物培地研究所 所長 大川三郎

大川先生の略歴

https://www.facebook.com/ohkawa.saburo

 

 CES(Chromagar Enterobacter sakazakii)寒天培地


はじめに

エンテロバクター・サカザキ感染症は、クロノバクター・サカザキ(Cronobacter sakazakii)が原因菌の感染症である。(旧菌名はEnterobacter sakazakiiであった。)1958年に英国Urmenyiらが新生児敗血症、髄膜炎からはじめて分離した。(当時はこの細菌は黄色色素産Enterobacter cloacaeとして分類されていた。)

エンテロバクター・サカザキ感染症は健康な人が本菌により感染症をひきおこす事はほとんどないが、乳幼児を中心に敗血症や腸炎をひきおこした症例が報告されている。この乳幼児感染症の感染経路はいまだに明らかにされていないが、有力な感染源として乳幼児用調製粉乳が考えられている。さらに成人での発生例も認められており、すべての年齢層で感染の可能性がある。(成人の場合は日和見感染症?)2004年のFDAの合同専門会議でエンテロバクター・サカザキの乳幼児用調製粉乳汚染が本菌感染症の原因であると結論された。

Cronobacter sakazakii形態学・生物化学的な性状から黄色色素産生するEnterobacter cloacae と同定されていた。1976年にSteigerwaltらが色素産生株と非産生株は性状が異なることから同一菌種ではないことを報告し、1980年にFarmerらがEnterobacter sakazakiiと命名した。その後、分子生物学的な検討から2008年にIversenらによってCronobacter sakazakii と命名された。

このサカザキは日本の細菌学者であり、腸内細菌科の研究に多大な功績があった国立感染症研究所に在籍中の阪崎利一博士に献名して名付けられた。C.sakazakii自然環境(土壌・汚水)から各種食品、とくにレタス、キュウリ、とうもろこし、レモン等の果物や野菜、食肉、牛乳の汚染がある。また牛乳や植物の食材を使った食品(豆腐、チョコレート、パスタ等)で汚染が報告されている。

本菌の検出用培地としてはVRBG寒天培地、ESIA寒天培地、DFI寒天培地、R&F寒天培地CES寒天培地、RAPIDSakazaki、Cronobacter media,PinnacleCSIM、Chromo Cult ,Hardy chrom sakazaki,DFI sakazaki agar,等がある。今回はこれらの培地の中からCES寒天培地について紹介する。

 

oh17.jpg

 

CES寒天培地(Chromagar Enterobacter Sakazaki agar

CES寒天培地はCHROMAGAR社によって開発されたクロノバクター・サカザキ菌の分離用寒天培地である。CES寒天培地は、従来は本菌の分離用培地として使用されていたVRBG培地を改良された発色酵素基質を利用した培地である。(発育したコロニーの色でC.sakazakiiと他の菌種が区別できる。)CES寒天培地に5-ブロモー4クロロー3インドキシルーα―D-グルコピラノシドを添加することで、多くの腸内細菌は分解できないが、C.sakazakiiは分解することができる。

従ってC.sakazakiiは緑―青色コロニーを形成する。さらにデソキシコレート、クリスタル紫の選択剤によりグラム陽性菌の発育が阻止される。本培地で発育するグラム陰性桿菌のみである。さらに培養温度を44℃にすることにより選択性が向上する。→腸内細菌以外のグラム陰性桿菌は発育できない。

 

1.組成(精製水1000mlに対して)

 

カゼイン膵消化ペプトン 7g
酵母エキス 3g
デオキシコ―ル酸ナトリウム 0.6g
X-α-グルコシド 0.15g
ブドウ糖 1g
塩化ナトリウム 5.0g
クリスタル紫 0.002g
寒天 15g

H 7.0±0.2


2.原理

発育に必要な成分として炭素原としてブドウ糖が、窒素原としてカゼインペプトンが用いられている。さらに選択剤(デソキシコレート・クリスタル紫)が含有されているために発育補助剤として酵母エキスが添加されている。デソキシコレート、クリスタル紫によりグラム陽性菌の発育を阻止される。従って本培地ではグラム陰性菌のみが発育する。(37℃の培養では)

5-ブロモー4クロロー3インドキシルーα―D-グルコピラノシドは多くの腸内細菌をはじめとする細菌は分解できないが、C.sakazakiiは分解することができる。従ってC.sakazakiiは緑―青色コロニーを形成する。他の菌種は緑―青色以外(無色等)のコロニーを形成する。さらに培養温度を44℃にするより選択性が向上する。

 

3.培地組成の役割

カゼイン膵消化ペプトン

細菌が発育するために必要な栄養素は①炭素原②窒素原である。このペプトンは細菌の窒素原である。細菌はタンパク質を分解する能力がないので、タンパク質をポリペプチド、ペプチドの型まで消化して培地に添加する必要がある。このようにタンパク質を消化、分解した物質をペプトンと言う。ペプトンの種類としてはカゼインペプトン・大豆ペプトン・獣肉ペプトン・心筋ペプトンおよびゼラチンペプトンがある。カゼインペプトンはカゼインを豚の膵臓のパンクレアチンを用いて消化したペプトンである。経済的に優れているために、一般的には培地の基礎ペプトンとして用いられる。

酵母エキス

一般的な細菌が発育するために必須の栄養素ではない。ペプトンの補助栄養剤として使用する。エキス類は不足した栄養分を補うことで細菌の発育を促進する。細菌の酵素作用を促進する作用(補酵素として)はビタミン類が豊富に含まれているためである。さらにビタミン等により酵素活性の促進作用により発育を高めることが可能となる。選択剤の含まれた培地では発育補助物質として利用される。

デオキシコール酸ナトリウム

デオキシコール酸ナトリウムは胆汁酸塩である。培地では選択剤として、同時に鞭毛の働きが強い細菌(プロテウスなど)の遊走阻止剤として利用される。グラム陽性菌はペプチドグリカン層が厚く、細胞外膜がないためにデソキシコレートにより溶菌されるために発育できない。グラム陰性菌は細胞外膜が厚いために溶菌されないために発育できる。

X-α-D-グルコシド

発色特異酵素基質であり、この基質は無色であるが、分解されると基質構造の変化により発色する。(無色→緑から青色)<Xは5 bromo-4 chloro-3-inndoxyl>である。

5-ブロモー4クロロー3インドキシルーα―D-グルコピラノシドは多くの腸内細菌をはじめとする細菌は分解できないが、C.sakazakiiは分解することができる。従ってC.sakazakiiは緑―青色コロニーを形成する。他の菌種は緑―青色以外(無色等)のコロニーを形成する。

<α-Dグルコシダーゼという酵素をC.sakazakii産生できる>という特徴がある。

ブドウ糖

ブドウ糖は細菌が発育するために必要な炭素原である。さらにC.sakazakiiが本培地に発育するために利用したブドウ糖を分解するときにαグルコシダーゼを産生する。

塩化ナトリウム

菌体内外の浸透圧の維持するために添加されている。細胞の分裂において細胞膜の増大と細胞壁の合成が重要であるが、培養初期段階ではそのバランスが崩れて細胞壁合成が不完全な状態で細胞分裂がおこることがある。この時にできたプロトプラストは低張液では簡単に溶菌してしまうが、塩化ナトリウムを添加することで溶菌を防ぐことができる。

クリスタル紫

トリフェニールメタ系の色素の一種であり、ベーシックバイオレット3、塩化メチルロザリニンともいう。クリスタル紫は染色液としてもよく用いられる。また殺菌消毒効果もある発育阻止剤や褥瘡の治療にも用いられていたことがある。グラム陽性菌の発育を阻止する目的で添加されている。とくにブドウ球菌の発育阻止作用はとくに強い。

寒天

寒天は培地の固形化剤であります。原料は海藻であるテングサ、オゴノリです。培地用としてはオゴノリが利用されております。主成分はアガロースで糖が直鎖状につながっており、細菌には分解されにくい構造になっております。寒天の内部に水分子を内包しやすく、多量の水を吸収してスポンジ状の構造を形成します。水分を蓄えることができ、栄養分をその中に保持しておける。そのため、微生物の培地に適します。寒天培地を加熱していくと解ける温度を融点、また解けた寒天が固まる温度を凝固点といいますが、寒天は融点が85~93℃、凝固点が33~45℃です。これも寒天に混ぜる成分により変動します。良い培地か否かは寒天の品質で決まります。品質とは透明度、ゼリー強度、粘度、保水力が優れていることです。

 

4.使用法<クロノバクター・サカザキ菌の検出> 

①緩衝ペプトン水で35-37℃ 24時間前培養する。

②培養液10mlを90mlのEEブロスで35-37℃ 24時間培養する

③CES寒天培地に0.1ml接種し、コンラージする。

④44℃、24時間 好気性培養する。

⑤緑―青色コロニーの有無を観察する。成書に従い同定試験を実施する。

 

5.培地の限界

1) C.sakazakii以外の菌種で緑色から青色コロニーを形成することがある。

腸内細菌科以外の菌種でX-αD-グルコシドを分解する菌種があるが、これらの菌種のほとんどが44℃の培養では発育することができないので問題は生じないがEnterobacter amnigenusやEnterobacter cloacaeの一部の菌株で分解する。したがってこの2菌種は同様のコロニーを形成するので注意する必要がある。

2) 44℃の培養では発育できないC.sakazakiiがある。

研究者の報告によると過去に分離されたC.sakazakii37℃では良好に発育するが、44℃の培養では発育が不良または全く発育しない菌株があることである。

3) 本培地をC.sakazakiiの検出に37℃の培養に使用できない。

本培地のパフォーマンスを確実に得たい場合は44℃培養が必須である。理由としては腸内細菌以外の細菌ではX-α―D-グルコシドを分解する菌種が多くある。しかし、44℃で培養することでこれらの菌は発育できないが37℃の培養では発育するために、鑑別が困難になる。

4) VCN状態のC.sakazakiiは発育できない。

培養不能状態で生息している細菌は本培地では検出できない。(発育しない)

 

参考文献

1) Iversen C, et.al :Int J.Syst Evol Microbiol, 58, 1442-1447 (2008)

2) Lai KK. : Medicine, 80, 113-122 (2001)

3) Anna B.Bowen, Christopher R.  : Emerging Infectious Diseases, 12, 1185-1189 (2006)

4) 伊吹圭二郎ら、:日本周産期・新生児医学会雑誌, 45,129-133 (2009)

5) 寺本知史ら、:日本周産期・新生児医学会雑誌, 45, 718 (2009)

6) 五十君靜信,朝倉宏 : 食品衛生学雑誌, 48, 209-233 (2007)

7)Muytijens,H,L.,et al ,J.Clin.Microbiol 20:684-686(1984)

8) Hawkins,R.E .South Med.J.84(6):793-5(1991)

9) van Acker,J,, et al .J.Clin.Microbiol 39;293-297(2001)

10) Nozarowec-White,M,, Int.J Food Microbiol,34;103-13

 

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