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培地学シリーズ23

 

 大川微生物培地研究所 所長 大川三郎

大川先生の略歴

https://www.facebook.com/ohkawa.saburo

 

ボツリヌス菌選択培地 -C.botulinum Isolation agar (CBI agar)

 

はじめに             

ボツリヌス菌は土壌や海、湖、川などの泥砂中に分布している有芽胞、偏性嫌気性菌である。(有芽胞細菌は耐熱性を有しているのが特徴である。)またボツリヌス菌の芽胞は、低酸素に置かれると発芽、増殖が起こり、毒素が産生される。この毒素は自然界の毒素のなかで最強の毒素を有し、AからGまでの型に分類される。ボツリヌス症は食品中で増殖したボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素を食品とともに摂取したことにより発生するボツリヌス食中毒と、乳児に発生する乳児ボツリヌス症に分類される。ボツリヌス食中毒はボツリヌス毒素が産生された食品を摂取後、8-36時間で嘔吐、視力障害、言語障害などの神経症状が現れるのが特徴である。乳児ボツリヌス症は1歳未満の乳児にみられるボツリヌス症である。乳児ではボツリヌス菌の芽胞を摂取すると腸管内で増殖し、産生された毒素が吸収されて症状があらわれる。便秘、全身筋力の低下による脱力状態になり、哺乳力の低下、筋肉弛緩により麻痺が特徴の症状である。原因となる食品は酸素がないビン詰や缶詰などである。なかでも自家製のビン詰や缶詰は危険であり、レトルトに似ているが加熱処理を施されていないものによる食中毒が発生している。またボツリヌス菌は,はちみつにも含まれており、乳幼児による食中毒に注意が必要である。海外では、ハムやソーセージも感染物質となっている。(古代ローマ時代からソーセージを食べることにより起きる特異な毒素として知られていたもので、病名の別症であるBotulinumはソーセージ(腸詰め)を意味するラテン語に由来することから、ボツリヌス菌は腸詰め菌と呼ばれる。)

この食中毒は致死率が高いので、検査および診断には迅速な対応が必要である。診断は中毒の原因と推定された食品、患者の糞便、血液、胃内容物、吐物などから毒素を検出し、ボツリヌス菌の分離培養をすることである。ボツリヌス菌の選択培地としてはCDC modified McClung Toabe egg yolk agar(EYA)寒天培地、Clostiridium Botulinum Isolation Agar(CBI)寒天培地がある。今回はEYA寒天培地と比べ、毒素産生能、選択能が優れるCBI寒天培地を紹介する。

 

C.botulinum Isolation Agar(CBI)寒天培地


oh23.jpg


CBI寒天培地は食品材料からボツリヌス菌を分離培養するための選択培地として米国で推奨されている。本培地は1981年に米国CDCのM.Dezfulianらによって開発されたボツリヌス菌の選択培地である。

1.原理

基礎培地としてカゼイン膵消化ペプトン、酵母エキスを用い、栄養豊富な培地となっている。(特にペプトンが40g/L含まれることが特徴である)さらに炭素原としてブドウ糖が添加されている。他の菌の発育を阻止しる目的でサイクロセリンとスルファメトキサゾールとトリメトプリム(ST合剤)が使用され、多くの材料中に含まれる他属の細菌は発育阻止される。さらに鑑別用として卵黄液が含まれ、リパーゼ反応、レチチナーゼ反応により発育した細菌を区別することができる。本培地で発育したボツリヌス菌はコロニー周囲の白濁(レシチナーゼ陽性)と真珠様光沢(リパーゼ反応陽性)が確認できる。

 

2.組成(精製水1000mlに対して)


カゼイン膵消化ペプトン 40.0g
酵母エキス 5.0g
ブドウ糖 2.0g
リン酸水素二ナトリウム 5.0g
塩化ナトリウム 2.0g
硫酸マグネシウム 0.01g
寒天 15.0g
卵黄液(50%)    50ml
サイクロセリン 250mg
スルファメトキサゾール 76mg
トリメトプリム 4mg

 

H 7.4±0.2

 

3.培地成分の役割

カゼイン膵消化ペプトン

細菌が発育するために必要な栄養素は①窒素原②炭素原である。このうちペプトンは重要な窒素原である。細菌は自力でタンパク質を分解することができないために、細菌の培地ではこの蛋白質をポリペプチド、ペプチドまで分解して添加しなければない。タンパク質を分解・消化した物質をペプトンである。ペプトンの種類としてはカゼイン・ゼラチン・獣肉・心筋ペプトンなどがあるが、カゼインペプトンは経済的に優れているために基礎ペプトンとして使用される。

酵母エキス

一般的な細菌が発育するために必須の栄養素ではないが、ペプトンの発育補助栄養剤として使用される。エキス類は不足した栄養分を補うことで目的の細菌の発育を促進する。とくに細菌の酵素作用を促進する。(補酵素)従ってコロニーの大きさや発育の早さを良好にすることができる。

ブドウ糖

ボツリヌス菌が培地中のブドウ糖を分解することが可能である。本菌は発育するために必要な栄養素である炭素原をブドウ糖を分解することにより、炭素原として利用する。

リン酸水素二ナトリウム

培地pHの緩衝材として用いられている。ボツリヌス菌の毒素はpHの酸性領域では破壊され易いために培地pHは厳密にpH7.4を維持する必要がある。

塩化ナトリウム

菌体内外の浸透圧の維持するために添加されている。細菌の分裂においては細胞膜の増大と細胞壁の合成が重要であるが、培養初期段階では、そのバランスが壊れて細胞壁合成が不完全な状態で細胞分裂がおこることがある。この時にできたプロトプラストは低張液では簡単に溶菌してしまうが、塩化ナトリウムを添加で、この溶菌を防ぐことができる。

硫酸マグネシウム

硫酸マグネシウムは細菌の酵素活性剤として使用することが多いが、本培地では特にボツリヌス菌の芽胞形成能を促進する物質として添加されている。

寒天

寒天は培地の固形化剤として使用されて、原料は海藻である天草、オゴノリから製造される。培地用に使用される寒天は経済性からテングサが主に利用される。主成分はアガロースで糖が直鎖状につながっており、細菌には分解されにくい構造になっている。寒天の内部には水分子を内包しやすく、多量の水を吸収してスポンジ状の構造を形成する。したがって水分・栄養分を保持できる。

卵黄液

ボツリヌス菌の推定同定の鑑別剤として用いられている・卵黄液にはレチチン(リン脂質)とアシールトリグリセリッド(脂質)成分が含まれ、この2つの成分をボツリヌス菌は分解することができる。レシチンが分解されるとコロニー周囲はレシチンの結晶化がおきるために白濁する。(ハロー現象)。さらにアシールグリセリッドの分解により、コロニーの表面が真珠様の光沢が観察することができる、

サイクロセリン

サイクロセリンは抗結核菌剤として使用されていることで有名な抗菌物質である。細胞壁合成阻害としてグラム陽性からグラム陰性菌の幅広い抗菌スペクトルを有する。したがってクロストリジュム属以外の細菌の発育が阻止される。

スルファメトキサゾール・トリメトプリム

大腸菌、肺炎球菌、エンテロバクター等のグラム陰性桿菌やブドウ球菌などのグラム陽性球菌の発育を阻止する目的で添加されている。スルファメトキサゾール+トリメトプリムは2つの抗菌物質で最適な効果を作り出す組み合わせである。トリメトプリムはジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することによって、ジヒドロ葉酸からテトラヒドロ葉酸の産生を阻害する。スルファメトキサゾールはパラアミノ安息香酸と競うことによって細菌のジヒドロ葉酸の合成を阻害する。したがって、トリメトプリムとスルファメトキサゾールという組み合わせは核酸とタンパク合成の過程を阻害する。

 

4.使用法

①食品の10%乳剤を作成する。

②乳剤10μlを採取し、CBI寒天培地に画線塗抹する。

③37℃、48時間 嫌気培養する。

④レシチナーゼ反応陽性(コロニー周囲の白濁)と真珠様光沢が認められたコロニーを成書に従い、同定検査を実施する。(C.botulinumについては同時に毒素試験もおこなう)

 

5.培地の限界

C.botulinu以外の細菌が発育する。

本培地ではC.botulinum以外の細菌、例えばC.bifermentansC.sordeliC.sporogenes等はコロニーを形成するがレシチナーゼ、リパーゼ反応が陰性なのでボツリヌス菌と区別ができる。

②一部の酵母様真菌、糸状真菌が発育することがある。

多くの真菌類は嫌気培養では発育は阻止されるが、長時間の培養ではコロニーを形成することがある。

③バチルス属が発育することがある。

バチルス属の多くは偏性好気性であるために嫌気培養の条件下ではコロニーは形成できないが、通性嫌気性のバチルス属が小さなコロニーを形成することがある。

 

参考文献

M.Dezfulian et.al  1981 J.Clinical Microbiology ,Mar. p526-531

阪崎利一:新細菌培地学講座 近代出版 1988

国立感染症研究所http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/336/tpc336-j.html

厚生労働省http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002672c.html

 

 

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