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  第17話「食料調達と薬剤耐性菌について」

 

 

 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 

 

 我々は微生物とともに生きていますが、我々に感染して病気を起こさせる微生物もいます。病気の治療には、抗生物質が使われています。抗生物質は、「微生物が産生し、他の微生物などの増殖や機能を阻害する物質」の総称です。広義には抗ウイルス剤や抗真菌剤、抗がん剤も含みます。

 

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 1940年代からペニシリンを筆頭に抗生物質が開発され、人類に大きな恩恵をもたらしました。やがて図1のように、抗生物質の使用とともに抗生物質の効かない耐性菌が出現し、感染症等の治療を困難なものとしています。ペニシリンが効かない黄色ブドウ球菌は1960年代に報告されています。この後、ペニシリンの分子構造を改変させた抗生物質が開発され、その代表としてメチシリンが使われるようになりました。これらの抗生物質も効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)も出現しました。その後、MRSA対策としてバンコマイシンが使われるようになりましたが、現在では、バンコマイシンにも耐性を持つMRSAが出現し、医療現場に暗い影を落としています。複数の抗生物質に耐性を持つ細菌も出現し,多剤耐性菌と呼ばれています。

 

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 食中毒菌も薬剤耐性を持ったものが出現しています。2011年にドイツを中心に発生した腸管出血性大腸菌O104:H4よる集団食中毒では,薬剤耐性遺伝子が確認されています。患者数4千人を超え、溶血性尿毒症症候群合併例908名,死者50名という大惨事を招きました。

 抗生物質に抵抗性を持つ仕組みは、次の4つに大別されます。1)酵素等による抗生物質の不活化,2)抗生物質の作用点の変化,3)抗生物質の排出の促進, 4)抗生物質の取り込みの抑制・阻害です。薬剤耐性に関する遺伝情報は、図2~4のように世代間で垂直に伝達されます。細菌の接合やウイルス(バクテリオファージ)による媒介によって異種の細菌にも水平的に伝達されます。

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 耐性菌が出現する場所は、3つに分類されます。まずは医療施設であり、抗生物質が使用されており、院内感染症等が大きな問題となっています。2つ目は、一般市民の生活の場である市中であり、医療関係者から処方された抗生物質が問題となります。3つ目は、畜水産業の現場です。動物の疾病の治療目的のみならず,予防的あるいは成長促進目的での抗生物質の投与も行われています。EUでは、抗生物質に関する将来への懸念から成長促進目的での抗生物質の使用が禁止されています。

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国際的にも薬剤耐性の脅威は認識されており、国連(WHO,FAO等)を中心に抗生物質の濫用の防止策が検討され、勧告されています。WHOでは2001年に次の5つの行動を呼びかけています。

1)抗生物質の使用と耐性に関する監視,2)抗生物質の合理的な使用と規制,3)動物における抗生物質の使用,4)感染者を減らすための予防制御,5)抗生物質の研究開発の促進。

全ての抗生物質に抵抗性を示す病原菌に感染し、治療ができないことになる可能性もあります。食料調達においても,フードチェーンに薬剤耐性菌が暗い影を落とさないようにしなくてはなりませんね。

 

参考文献

1)泉谷秀昌、食品を介した抗生物質耐性菌の世界的感染拡大、日本食品微生物学会雑誌, 31,57-62(2014)

2)WHO, The Evolving Threat of Antimicrobial Resistance: Options for Action. Geneva, Switzerland (2012).

http://www.who.int/patientsafety/implementation/amr/publication/en/

 

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