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  第4話「誰がどのように食べるのか」


 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 

どのような人が、どのように食べるか「思いやり」ながら食品を取り扱う必要があります。「思いやり」は目には見えませんが,ビタミンと同じように食生活には必要なものです。「ビタミン愛」と呼んでも良いのではないのでしょうか。

食べ物に由来する健康障害を食性病害(Food borne disease)と総称しています。栄養失調は食性病害には含めずに独立した栄養問題として取り扱われます。人類が経験した食性病害について分類し,その代表例を示すと表1のようになります。

 

ジャガイモはソラニンと呼ばれる有毒成分を含むことがあります。ソラニンはアルカロイドと呼ばれる化学物質です。アルカロイドには、トリカブトの毒素のように猛毒なものもあります。シアン化合物を含んでいる植物もあり、豆類やイモ類等はシアン化合物の少ない品種が栽培されています。発ガン性物質が検出される例もあり、ソテツの実のサイカシン、ワラビのプタロキサイド、ナツメグのサフロールが有名です。

植物成分の中にはビタミンB1の吸収を阻害するものもあれば、消化酵素トリプシンの働きを阻害するものもあります。大豆中には抗甲状腺物質があることも知られています。これらの生理活性物質は食品原材料に内在しており,加工・調理により許容できる量に減らして食べている場合もあります。ダイスや牛乳のように多くの人には問題のない食品であっても、重篤なアレルギー症状を呈する方もいます。

 食中毒菌等の病原体や毒素産生カビが食品を汚染することもあります。火山の噴火に伴う水銀等の環境への放出等により、食品が汚染されることもあります。

 食品は放置されると品質が劣化し、油脂等では加熱により劣化は早くなることが知られています。水産物等に含まれる第二級アミン類は、野菜等に含まれる亜硝酸に出会うと、発ガン性を示すニトロソアミン類に変化していくことも知られています。

 

食中毒等は、科学技術が進んだとしても無くなることはないと思われます。食品安全は、食べられる物まで食べられなくすることではありません。許容できるリスクは受け入れて、他の生物とともに地球あるいは宇宙環境を維持して行くことを目指すべきでなないでしょうか。O157等の病原体は人間にとって困った存在ですが、彼等も一所懸命に生きています。

微生物と人間の健康との関係は非常に複雑です。体力の落ちている人や免疫不全の方の場合は、微生物はいない方が良いと考えられますが,一方、抵抗力をつけ免疫系の発達を促すためには、微生物は適度にいた方が良いと考えられます。

微生物制御を行うときには、食べる人側の問題(表2)を良く整理し検討しなければなりません。孫子の言葉「彼を知り、己を知れば百戦危うからず」は、微生物制御にも通じます。食品とその取り扱い場所で、どのような消費者を守るために、病原体を敵として戦うのかを認識し,ビタミン愛欠乏を起こさないようにする必要があります。

その一方,せっかくの安全でビタミン愛の豊富な食品も、食べる方がいいかげんであれば、良い結果になるとは限りません。

 

 

【参考文献】

小城勝相,一色賢司編:食安全性学,放送大学教育振興会(2014)

食品産業センター:HACCP基盤強化のための衛生・品質管理実践マニュアル(2014年版)

http://www.shokusan.or.jp/index.php?mo=topics&ac=TopicsDetail&topics_id=704

食品衛生協会:食品衛生関連情報 http://www.n-shokuei.jp/information/index.html

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