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  第47話「食品衛生とウイルス」

 

 

 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 

 

米国ユタ州のコンビニエンスストアを利用した人たちに、A型肝炎ウイルスに感染した恐れがあるというニュースが伝わってきました(図1)。

 

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その警告対象の人数は、2000人にも及ぶと推定されています。保健当局は、そのコンビニを12月26日~1月3日の間に利用した住民に、病院の受診やワクチン接種を勧告しています。この地域では昨年8月からA型肝炎が流行していたそうです。A型肝炎ウイルスに感染した従業員が、商品に触れたり、トイレを利用したりしてウイルスを放出していたと推測されています。


この店舗で期間中に、飲み物や果物、スナックなどを買って食べたり、トイレを使ったりした客は、ワクチンを接種するよう勧告されています。型肝炎ウイルスは感染力が強く、汚染された食べ物や水の摂取によって感染します。感染後、15~50日の潜伏期間を経て、吐き気、おう吐、発熱、倦怠感などの症状が出ます。ワクチンの有効性は確認されていますが、食品衛生の基本を守る事により感染を防止することが大事です。レストランの利用者にもA型肝炎ウイルスが見つかっているようです。今回は、食品衛生におけるウイルス対策についてお話します。


1)ウイルスと他の微生物の違い

大きな違いは、ウイルスは学術的には非生物として考えられていることです。微生物として分類されてはいますが、他の生細胞に寄生しないと自己複製して、増殖することができないことから生物学的な分類では生物に含まれてはいません。ウイルスの構造は、基本的には核酸(DNAもしくはRNA)とタンパク質で構成されています。ウイルスの増殖の様子は、図2に示しました。

 

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 通常、微生物は、細菌、真菌、ならびに原虫を含んだ微小な生物を意味します。細菌は、核膜がない細胞(原核細胞)からできている生物です。真菌は、核膜で囲まれた核を持つ細胞(真核細胞)を持ち、細胞分裂の時に染色体構造が出現する生物です。酵母・カピ・キノコが属しています。原虫は、寄生虫のうち単細胞生物のものが分類されています。


 細菌、真菌ならびに原虫は、増殖に必要な構造を自らの細胞内に有していますが、ウイルスにはありません。他の生物を利用して、増殖します。ウイルスが感染しても、病原性がなければ症状は現れません。食品衛生上問題となる主なウイルスには、次のようなウイルスがあります。


2)食品衛生上問題となるウイルスについて

 食品を媒介として、消費者に感染し、健康被害を与える注意すべきウイルスとしては、A型肝炎ウイルスやE型肝炎ウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスなどがあります。これらは極めて小さく、図3のように電子顕微鏡を使わなければ見ることはできません。それぞれの特性は、以下のとおりです。特性を理解して、対策を立てる必要があります。

 

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①ノロウイルス(Norovirus)

 カリシウイルス科のウイルスです。極めて小さく、電子顕微鏡下で正20面体のイガ葉状の形態が観察されます。ヒトの腸管内でのみで増殖します。少量菌量で感染を起こします。10分間の煮で感染力を消失します。感染者自身の糞便、吐物には、大量のウイルスが含まれています。エアロゾールとして空中に漂っていることにも注意が必貫です。カキなどの二枚貝、水、野菜サラダ、ケーキ等の多様な食品により媒介されます。


 極めて少量のウイルスで感染は成立します。下痢(激しい水溶便のことあり)、嘔吐、吐気、腹痛が起こり、ときに軽度の発熱、頭痛、筋肉痛を伴います。潜伏期間は1~2日間で、発症期間は1~6日間程度です。通常、予後は良好です。ヒト(糞便、吐物)に由来する汚染防止には重大な関心を持つ必要があります。サボウイルス(Sapovirus)も、ほぼ同じ内容です。

 

②ロタウイルス(Rotavirus)

 レオウイルス科のウイルスです。主に乳幼児の下痢症の原因となりますが、老人や免疫不全の方も発症することがあります。感染者の手指や汚染された調理機異類、水などを通じて、食品を汚染し、消貴著の口に到達します。ウイルスが手指に付着し、ロに到達することもあります。10~100個のウイルスで感染し、発癌することがあります。嘔吐、水様下痢、軽度の発熱が起こります。潜伏期は1~3 日間で、発症期間は4~6日間です。


③A型肝炎ウイルス(HAV:Hepatitis A virus)

 ピコルナウイルス科のウイルスです。A型肝炎(四類感染症)を起こします。汚染源は、感染者や糞便です。ウイルスの媒介となる食品は、水、サンドイッチ、果実、野菜、乳・乳製品、サラダ類、異類、ジュース類などです。感染は、子供よりも大人に起こり易いと言われていますが、子供も注意が必要です。10~100個のウイルスで感染し、発病することがあります。突然の発熱、不快感、嘔気、食欲不振、腹部不快感、黄痘を続発します。潜伏期は1~7週間(平均30日間)と長いことから、原因究明が困難な場合があります。
発症期間は1~2週間と言われていますが、数週間にも及ぶ場合もあります。慢性疲労が後遺症として残ることもあります。


④E型肝炎ウイルス(HEV:Hepatitis E virus)

 ヘペウイルス科のウイルスです。E型(四類感染症)肝炎を起こします。豚、猪、鹿、その他野生動物が保有している場合があります。また、洪水等による飲料水の汚染にも注意する必要があります。媒介食品としては、豚、猪、鹿肉、肝臓の生食、不潔な水などがあります。このウイルスは、すべてのヒトに感染しますが、妊婦では劇症肝炎に移行しやすく死亡率も高いことが知られています。感染後、倦怠感、黄疸、悪心、食欲不振、腹痛、褐色尿(感染しても症状が見られないことも多い)が起こります。潜伏期は、12~50日(平均6週間)です。発症期間は約1ケ月であり、通常は慢性化しないとされています。


 上記のウイルスは、加熱により不活性化することができますが、清潔なフードチェーンを維持することが重要です。生食を避けられない場合は、清潔なフードチェーンを通じて、保菌者ではない人により、衛生的な取り扱いを受けていることを確認していただきたいと思います。


【参考文献】


1)Food Safety News:Two more Utah restaurants,custmers exposed to  hepatitis A,2018年1月11日,7-Eleven customersat Utah location exposed to Hepatitis A,2018年1月8日

2)北里英郎ら:ウイルス・細菌の図鑑、技術評論社(2016)

3)厚生労働省:食中毒統計作成要領(2012年12月28日)等に示された食中毒微生物の疫学的特性, http://www.shokusan.or.jp/sys/upload/802pdf21.pdf

4)農林水産省・有害微生物による食中毒を減らすための農林水産省の取細(リスク管理)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_microbio.html

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