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  第48話「2つの国のリステリア問題」

 

 

 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

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 世界保健機関WHOは、昨年から南アフリカでリステリア モノサイトゲネス(Lm)による過去最大規模の感染症が広がっており、食品が媒介している可能性が高いと懸念を表明しています。南アフリカ疾病管理局NICDによれば、2月14日現在で、患者数は872人、死者は164人に達しているそうです(図1)。原因食品は、未だに判明していません。WHOは、患者の多くは新生児であり、HIVウイルスの感染者も多いことを指摘しています。今回は、Lmの2つの問題についてお話しします。


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1)南アフリカのLm問題

 2017年12月5日、南アフリカの保健相は、食品を媒介して広がるLmが原因で36人が死亡し、577人が感染症を発症した発表しました。特に新生児や高齢者の感染リスクがあると国民に警戒を呼びかけました。その後も患者や死者の発生は続き、図1のように過去最大のLmによる被害者を出しています。Lmは表1,2のように、土壌や植物、河川水など自然環境に広く分布し、汚染された食品や料理、くだもの、野菜などを摂取するとインフルエンザにかかった時のような症状を引き起こします。重度の感染の場合、死亡する場合もあります。新生児や高齢者、免疫が低下している人やAIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)にかかっている人、妊婦も感染しないよう注意が必要です。


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2)米国のLm問題

米国では1990年代に、ホッドドッグ等の食肉製品に由来するLmによる大型の食中毒があり、Lm対策は進んでいました。しかし、2011年には、予想外のカンタロープメロンによるLm食中毒が発生し、33名が死亡し、流産してしまった方もいました。その後、加熱せずにそのまま食べるRTE(Ready To Eat)食品によるLm食中毒もしばしば発生するようになりました。

 米国は、2011年にFSMA(Food Safety Modernization Act、食品安全強化法)を成立させ、Lm対策を含む食品安全対策を近代化しました。FSMAの法規制により、具体的な内容を定めた規則が順次,策定・施行されています。

米国では、野菜や果物、さらにはカット野菜などの加工物をProduceと総称しています。このProduceの関係者も、FSMA103条の現行適正製造規範(CGMP,Current Good Manufacturing Practice)ならびにハザード分析とリスクベースの予防コントロール(Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food;HARPC/PCHF)を遵守することを求められています。

PCHFの対象となる事業者は,図2に示すような「食品安全計画(Food safety plan)」の作成が義務づけられています。PCHFでは,ハザード分析を行い,何らかのコントロール手段(管理手段PC)が必要な重大なハザードが特定された場合には,そのハザードに対してPCを設定しなければならないとされています。


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 PCには,①プロセス予防コントロール(Process PC),②食物アレルゲン予防コントロール(Food Allergen PC),③サニテーション予防コントロール(Sanitation PC),④サプライチェーン予防コントロール(Supply-Chain PC)の4種類があります。これらに加えて,PCを適用する全ての食品についてリコール計画を作成しなければなりません。

 これまでは、図3のように加熱などのkill-stepがない食品(カット野菜など)のLm食中毒を予防するための徹底的な洗浄などは,いわゆる「HACCPの土台となる一般衛生管理プログラム(前提条件プログラム)」で取り扱われてきました。米国ではPCHFの施行に伴い,「一般衛生管理でコントロールする」と考えられていたハザードについても,ハザード分析の結果で「食品安全上,重大なハザード」と判断された場合には,食品安全計画において「サニテーションPC」として取り扱い,厳格な管理をしなければならないと法的義務を課すことになりました。


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 この変更について担当官庁であるFDAに、多くの食品関係者から意見が寄せられているようです。表3に、Produce関係者の意見の要約を示しました。生食文化を持つ我が国は、対岸の火事とせずに国民的課題と捉えていただきたいと思います。リスクコミュニケーションにより、消費者を含むすべての関係者に生食とフードチェーンの関係を考えていただきたいと願っています。


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【参考文献】

1)窪田邦宏、天沼宏、春日文子:米国で2011年に発生した生鮮果物関連の大規模食中毒アウトブレイク,食品衛生研究,62(6),6-12(2012)

2)立石亘: FSMA、食科工誌,65(1), 32-33 (2018)

3)食品衛生コラム第6話、第16話、第23話、第30話、第31話、第40話

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