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  第52話「食品安全文化Food Safety Culture」

 

 

 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 

 

 

 

改正食品衛生法が本年6月7日に成立し,13日に公布されました。主な改正点は,表1のとおりです。

 

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広域的な食中毒事案への対策強化やHACCPに沿った衛生管理の制度化などが、新たに食品衛生法に盛り込まれています。法律を整備し,取り締まりを強化しても,食性病害や食品偽装などの不祥事は、簡単にはなくならないと思われます。先進諸国を中心に,食品安全をより確実なものにするために,多くの法整備や仕組みの改善が行われて来ました。


食品衛生は,食品安全を達成するための手段(measures)です。食品衛生に改善を加えても不祥事はなくならず,消費者の信頼も得られにくくなっています。その一方で,食品安全を表面上の理由とする食品の廃棄は増えています(図1)。法律やシステムよりも、人的要因である食品安全文化Food Safety Cultureの不足が悪循環の原因ではないのかと考えられるようになりました。食品安全文化について考えてみましょう。

 

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1)一人一人の自助努力がなければ


刺身に寿司,「TKG(卵かけご飯)」も「KT(釜玉うどん)」も大好き,野菜サラダも,カットフルーツも,・・・我が国の食生活の特徴である「生食文化」と「少ない食中毒」を維持し、次世代に伝達していただきたいと願っています。生食にはO157やサルモネラ等を媒介するリスクがあります。農場から食卓までの食品取扱い現場の全員が、安全な食品を提供する当然の責務として、自助努力を続けていただくことを重ねてお願いいたします。消費者も例外ではありません。表2のように、WHO世界保健機関も食品安全への貢献を、全ての人に呼び掛けています。

 

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Dr.Smilesの残した「天は自らを助くるものを助くHeaven helps those who help themselves.」は、食品安全分野でも大切な教えです。食品衛生上の効果的な殺菌工程(Kill Step)のない生食食品は,消費者を含めた国民全員の自助努力が前提条件です。生食されない食品の安全な生産から消費にも,自助努力は必要です。
科学技術が進み,食品衛生に多くの工夫が導入されています。図2のように,悪意のある食品偽装や毒物の混入対策,悪意のない食中毒や異物の混入に多くの対策や工夫が取り入れられ,法的な整備も行われて来ました。

 

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食品偽装は、大昔から行われてきた悪意のある卑怯な行為です。食品防御は、悪意のある人が食品を汚染することに対する防衛行為です。人間は悪意がなくても表3のようにミスを犯し,機械装置も故障します。その結果として、食中毒や食品苦情が発生することがあります。

 

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過去の食性病害事例から教訓を得て、Codex食品衛生の一般原則に代表される前提条件プログラムが開発され実施されています。その上で、HACCPによる食品の衛生管理が行われるようになりました。我が国では、改正食品衛生法によりHACCPによる衛生管理が義務化されることになりました。
食品安全プログラムとして、総合的にフードチェーンの始めから、最終消費まで管理することが試みられています。しかし、食品安全の理想の状態とはかけ離れている場合も多いように感じられます。最新の食品安全システムを導入しても,やがて時代の流れに合わなくなります。諸行無常であり,継続的な改善が求められています。継続的改善と言うのは簡単ですが,実現は容易ではありません。


図2の背景に書かれている食品安全文化Food Safety Cultureが不足している、あるいは脆弱なのではないかと考えられています。食品安全のバックグランドになる歴史、地理、食習慣、気候等まで含むものが食品安全風土Food Safety Climateと考えられます。これらの定義は固まっていませんが、安全な食品の安定調達や消費には必須の要素であると思われます。


私見ですが、食品安全文化Food safety cultureは、従属栄養生物である人類の持つ食べることへの願いやこだわりだと思われます。人間は、変化する環境の中で,諸行無常を乗り越えて,食べ続けてきました。その中で、安全で安定的な食生活を送る行動規範や様式を獲得してきました。フードチェーン各段階で、それぞれの良い食品安全文化が必要です。各段階で忘れてはならないことの1つは、我が子を思いやるような、食べる人への思いやりではないでしょうか。


食品産業では,顧客が製品を食べて安全であり,喜ばれることを認識し,仕事に誇りを持つことであり、仕事に正しくこだわりを持つ人々が必要です。こだわりは経営のトップから始まり、全員が持ち続けるべきだと思われます。


【参考文献】


1) L.Jespersen,et.al: Company Culture and the Path to Improved Food Safety: Setting the Tone to Support a Strong Food Safety Culture, Food Safety Magazine,(2018)
https://www.foodsafetymagazine.com/magazine-archive1/junejuly-2018/company-
culture-and-the-path-to-improved-food-safety-setting-the-tone-to-support-a-
strong-food-safety-culture/


2) C.J. Griffith, et. al,: The assessment of food safety culture, British Food Journal, 112,439-456(2010)


3) C.Beach: What are they doing when nobody is watching?, Food Safety News,
2018.5.9
http://www.foodsafetynews.com/2018/05/what-are- they-doing-when-nobody-is-
watching/ #.WwJeiDTRD8k


4)食品安全検定協会:食品安全検定テキスト中級、第2版、(2018)

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