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  第8話「強い加熱、弱い加熱」

 

 北海道大学名誉教授・日本食品分析センター顧問 一色賢司

一色先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 

第2話でお話ししましたように、食品の微生物制御には沢山の手法があります。その中でも、加熱は確実な微生物制御法として世界中で広く使われています。

1)ナポレオンの懸賞金

18世紀にフランス軍は英雄・ナポレオン(1769-1821年、図1)の命に従い、ヨーロッパ各地を転戦し、食料調達に大変な苦労をしていました。ナポレオンは軍隊の士気を高め戦闘力を維持するため、戦場においても安全で、美味しく、栄養素を十分に含む食料を必要な量を供給しなければならないと考えるようになりました。多額の懸賞金を出して、新たな食品の保存や流通に関する技術開発を奨励しました。

ニコラ・アペール(1749-1841年)は密封容器の中に食品を閉じ込め、強く加熱する技術を開発し、そのナポレオンの懸賞金を得たのでした。アペールは、ガラスびんとコルク栓で食品を封入し、最終的にはロウで密封したのちに、煮沸殺菌し、食品に保存性を与えたのでした。1804年の発明でした。

6年後の1810年には、英国のピーター・デュラン(1766-1822年)がガラス容器の代わりに鉄板にスズでメッキを施したブリキの缶を使うことで特許をとり、実用的な缶詰食品に生まれ変わりました。

 ブリキを使った缶詰食品が開発されましたが、缶切りは存在していませんでした。どうして中身を食べたのでしょうか? 諸説の中で、信頼性の高いものは「ハンマーとタガネ」を使ったという説です。ダイナミックな方法としては、マキ割り用の斧を使ったというものもあるそうです。

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ブリキを使った缶詰は食品加工の進展をもたらし、一大ブームを巻き起こしました。その一方で興味深いのは、充填密封後に加熱殺菌しない缶詰も作られ、今日も愛用されているということです。クッキーや各種お菓子等の容器として広く使われてきました。すごい非加熱缶詰食品がスエーデンに伝わっています。クサヤよりも臭いシュールストレミングスという鰊(ニシン)の塩漬けの缶詰です。図1の写真は、小生の話を聞いた北海道大学の学生達がインターネットで取り寄せて、覚悟を決めて食べた残骸です。

シュールストレミングスを飛行機に持ち込むことは拒否されます。飛行中に臭いが洩れたら、逃げる場所がないからでしょうね。船便で取り寄せることができます。缶詰にされてからも加熱されないので、発酵が続き、硫化水素や炭酸ガス等で内部のガス圧が高くなり、変形する缶詰もあり、物理的に危険な場合もあるそうです。加熱された通常の缶詰で変形があれば、不良品です。

英国でブリキ缶を使って食品を密封充填し、100℃を超える温度で加熱する加圧殺菌装置も開発され、ボツリヌス等の耐熱胞子対策もできるようになりました。19世紀になると米国を始めとして各国で缶詰の大量生産が行われるようになりました。我が国でも大量の加熱缶詰が作られています。

 

2)お寺の日記とパスチャライゼーション

 上記のように18~19世紀は強い加熱で食品を保存しようとしていていましたが、当時の先進国でも食品の発酵や腐敗の原因は不明のままでした。微生物の存在は知られておらず、空気に良いものや悪いものがあると思われていたようです。

ルイ・パスツール(1822-1895年)はフランスに生まれ、化学者として酒石酸の結晶について研究していましたが、ワインの腐敗に悩む人々の話に興味を持ち、微生物学を研究するようになりました。現在では、第7話で紹介した、ロバート・コッホとともに「近代細菌学の開祖」と呼ばれています。

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1861年には、細長い首を持つ有名な「白鳥の首フラスコ」を用いて加熱した肉汁の実験を行い、従来の「生命の自然発生説」を否定しました。1862年には、加熱による腐敗防止法の開発に取り組み低温殺菌法を開発し、論文として記録に残しました。ワインや牛乳などの液体を60℃程度の弱い加熱で数十分間加熱し、腐敗細菌などの微生物を殺菌する方法です。現在でも世界中で使用されているパスチャライゼーション(図2)と呼ばれている方法です。

 我が国では、古くから酒の「火入れ」が行われてきました。奈良にあるお寺に伝わる「多門院日記」では、永禄11(1568)年の記述に「酒を煮させ樽に入れる」と記されています。酒の火落ち(腐敗し、酸敗すること)を防止するために、加熱していたのでした。パスツールの研究の少なくとも300年前には、我が国では低温殺菌が「火入れ」と呼ばれて行われていたのでした。我が国の技術の伝承は、以心伝心で行われ論文として記録に残す習慣はありませんでした。西洋では、論文で記録を残す習慣があり、国際的には低温殺菌はパスツールの業績とされています。我々のご先祖が論文として「火入れ」を記録していたら、Pasteurizationという言葉は存在しなかったと思われます。

 

【参考文献】

(社)日本缶詰協会、缶詰誕生200年の歩み

https://www.jca-can.or.jp/200anniv/slide/slide01.htm

清水 潮、食品微生物の科学―食品微生物基礎編、幸書房(2012)

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