第1回 我が国における食品の品質衛生管理のすがた
2014.04.15
J・FSD㈱ 池亀公和
多くの食品取り扱い施設には、品質衛生管理の担当者がいてその施設の品質と言うよりも衛生管理に重点を置いて管理している。ではどの様な管理をしているかと言うと中小の食品工場では、そのほとんどがその日に製造した(頻度は様々)製品の細菌検査であったり、1か月に1回(施設によって頻度は異なるが)実施している工場内環境の拭取り調査などが主な仕事のようだ。なぜかどこの工場や食品取り扱い施設でも大方このような作業を行っているのを見ることが多い。
これらの作業を行ったデータはどの様に現場にフィードバックされているかと言うと、それらのほとんどがそのまま蓄積されているだけで、工場長の印鑑が押され承認されている状況で終わっているのが現実ではないだろうか。これではデータを作成すること自体が衛生管理になっており、まさに検査のための検査となっている。
ある食品加工工場の中では、サルモネラの陽性率が非常に高いままデータが蓄積されており、ある日その工場長から私になぜこのようにサルモネラが良く出るのか調べてくれとの依頼があった。
従業員は100名前後のこじんまりとした食品加工工場であったが、大学出の品質管理担当者と言う女性の方からその管理の詳しい内容を聞くことが出来た。
そのなかで、驚きの事実がいくつか出てきたのには呆れてしまった以上に、我が国の形ばかりの衛生管理と言う現実を見せられたような気がした。
まず、サルモネラにはDHLという分離培地を使用していたが、その中で黒くなったコロニーを全てサルモネラにしていたということである。大学の実習で教わったということだが、やはりこのような立場の方たちのための資格としての教育の場が必要であると感じた。
一部の検査機関でもこのような方たちを対象にした研修は行っているが、公に認められた資格ではないために、このような教育を受けないままの品質管理担当者は多いと感じる。
また、たびたびサルモネラが検出されていたにもかかわらず、そのまましょうがないなとしていた工場長ののんきさもあきれる。
この数十年間、私は多くの食品工場や食品製造施設を見てきたが、その施設における品質衛生管理の多くが木を見て森を見ない作業で終始していると感じた。
品質衛生管理担当者は、その施設における危害分析を行い、もっとも重要である項目に重点を置いた作業スケジュールを作成することが大切である。
例えば、上記の工場では異物混入やピンホールが頻繁に発生しているにもかかわらず、それらについての分析はほとんどされず、修正修正と言うモグラたたき的な品質衛生管理を行ってきていた。その工場を少しでも良くするためには、普段の異常や苦情をどれだけ減少させるかと言うことが大切であり、それらの作業にも多くの時間を割かなくてはならないはずである。
自社のデータの分析をしてその結果を現場に生かすことこそが本来の品質衛生管理であるのに、肝心なデータを見ずにそのプロセスばかりに気が行ってしまっては、何のための品質衛生管理かわからない。
品質衛生管理とは、データを作ることではない。データを作る作業はできるだけ簡便化し、無駄を少しでも省いた、効率的な品質衛生管理を行ってこそ安心安全を保証することが出来るんだということを理解していただきたい。