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第10回 我が国における食品の品質衛生管理のすがた

2015.01.15

J・FSD㈱ 池亀公和

池亀 公和先生の略歴

 あけましておめでとうございます。

 今年も新たな年を迎えることができましたが、今年はどのような年になるのでしょうか。個人的にも社会的にも興味津々といった気がします。

我が国では、アベノミクスにおける「地方創世」重点政策の中で、昨年7月25日、内閣官房に「まち・ひと・しごと創生本部」設立準備室が発足し、9月の内閣改造でこれが「地方創生本部」と称されていますが、食品製造における衛生管理についても地方における活動が活発になることなのでしょう。

それは、食品製造業で見ると全製造業の就業者数に占める食品製造業の割合が、沖縄が50%を超えており、北海道が45%で、その次が鹿児島ということは、要するに地域に原料があるところに食品産業が根付いているということになります。したがって、我が国の食品衛生にかかわる地方の活動は大きく動くことになることが考えられるのです。

 なかでも、大手食品企業においてはその9割がHACCP管理が出来ていますが、中小企業についてはまだ3割にとどまっていることから、厚労省は昨年の5月に食品事業者が従来型のやり方で食品の衛生管理をやるのか、あるいはHACCP型で今後やっていくのか、事業者自らがどちらかを選択してくださいというガイドラインを出し、今年度中に各都道府県等にその条例を直すよう依頼しています。

 

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 来年度からは、従来型の管理運営をやるのか、HACCPに基づく管理運営をやるのかという、選択できるシステムになるわけです。そして、今後数年で厚労省はHACCPの「義務化」ということを念頭に置いていることも聞こえてきますので、いずれは日本全国の食品製造施設では、HACCP管理が出来ていることになります。

現在の地方の状況は、ご存じのように少子化が非常に進行しており、子供たちをいくら育てても、都会に行って、戻って来ない。一方で高齢化がどんどんすごいスピードで進んでおり、10年後にいま65歳以上が、3人に1人という状況から、2人に1人が65歳以上だという村まで出現することが考えられ地方の食品工場においてはその人材の確保も大きな問題となることが考えられます。

 また、対外的な側面では、日豪EPAが昨年の臨時国会で関連法も含めて成立しており、年明けからもう発効するという状況になっており、一方、TPPはこの間の昨年11月の首脳会議で合意に達せず新年に持ち越されていて、先行き不透明な状況になっております。

 このような状況の中で、食品衛生にかかわる問題は当然グローバルな観点で考えなければなりません。

 しかしながら現在でも日本の食品製造業者の多くは大変厳しい規格基準で製造していることについては、実は消費者にも十分伝わっていないのが現状でもあり、食品製造業者にとってはなかなかインセンティブを得られないのが現状とも言えるでしょう。したがって、今後はHACCP方式を義務付けるようになるためには、安価で得ることができる認証システムも同時に考えていく必要があるでしょう。

 これについては、既に食品産業センターの主催で、全国の消費者向けにHACCP実施工場の見学とHACCPの講習をセットにしたツアーを行っており、私もそのツアーの中で講師をさせていただいています。しかしながらこの見学会や講習会に参加できる消費者はほんのわずかでもあることから、さらに消費者に対して我が国の食品安全品質レベルをはじめとした情報を提供することが大切になると考えます。

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 また一方で、海外に製品を輸出する企業につきましては、アメリカが食品安全強化法という法律をつくり、2016年の8月ぐらいから施行されるということを聞いております。   

 その目的としては、アメリカ国内で流通するほとんどすべての食品について、HACCPの考え方により製造されたもののみ認めるということです。当然日本から輸入するものについても同じような要件がかかってきますので、再来年以降、アメリカに輸出をしたいというような事業者であれば、そのための対応が必要になってくるでしょう。

 このように我が国の食品製業者にとっては、国内では取引先の規格基準があり、またいろいろな国際基準がありと非常に複雑な衛生管理が求められており、その規格基準が対外的にも内部的にも多数存在していることから、各業者はそれに振り回されている感もあります。

 そこで、国では日本初または、日本発でもある世界標準的な安全規格というのをつくろうということで検討を始めているようですが、これには是非期待したいものです。

 世界的にも最も品質の高いと言われている我が国が主導となった食品衛生の規格基準は当然あるべきことであり、そこには今まであったような欧米のダメダメ的な規格基準ではなく、日本の本来持っている自主的にゴミを拾うというようなメンタリティーの要素も入れてもらいたいものです。そして、食品の安全安心の分野においても我が国が世界をリードしていくという環境が必要ではないでしょうか。