第3話 食品の安全性を直接検証する「DOX」の使い方
2009.01.15
簡単、早い、多検体同時
DOXは、面倒な培地作成やコロニーカウントが必要ありませんから、細菌検査の知識を持ったスタッフが居ない工場でも簡単に使えます。
検査内容は、一般生菌と大腸菌群が出来ますが、大腸菌の測定も追加して検査することも出来ます。 検査の時間ですが、一般的な培養での検査ですと、48時間あるいは24時間ほどかかりますが、DOXは最短で6時間です。 一度に検査できる検体は、30検体と、60検体の2つの機種があります。
DOXは、簡単に使える、6時間で判定、そして多くの検体を同時に検査できる、という強力が検査機器なのです。 30検体の機器では、例えば、原材料10,中間製品10,製品10が一緒に検査できるのです。
検査の方法
機器の準備は、パソコンとDOX本体を接続します。
検査する食材を生理食塩水と混合して、これを1㏄と、専用培地を1㏄ずつ、DOXの本体にセットする専用セル(小型容器)に注入します。 あとは、自動計測し、自動記録されます。
DOX添付ソフトでは、データの入力が、製造費、検査項目、検体名、ロットと個別名などが入力できます。この項目は記憶させることが出来ますので、一 度登録するとそれ以降の同じ検査のデータ入力が不要になります。
また、報告書作成と検索の両方の機能がありますから、報告書の作成や過去のデータの検索表示が出来ます。このデータはエクセルに貼り付けが可能です から、傾向の分析が出来ます。
傾向の分析
傾向の分析というのはHACCPにとって非常に重要なものです。
例えば、弁当製造工場では、ほうれん草のごま和えやサラダといった、日持ちがあまりせず、劣化スピードが速い製品に気をつけなければなりませんが、 この検査をし、傾向を分析することは、安全の確保のために重要です。
ある工場では、これらの製品の検査を1月から始めました。
検査の方法は、製品サンプルを常温保管し、製造後6時間、12時間のデータを取りました。製造後6時間というのは、朝出来上がった製品を、お客様が遅い 昼食で食べる頃の状態です。12時間は虐待テストで、万一お客様が「配達後2時間以内にお召し上がり下さい」というお願いを無視あるいは知らずに翌日食 べてしまうようなことを想定しています。 常温保管ですが、毎日の天候は違いますので、その日の状態でどうなるかを現実的に検査したいからです。
和え物の例
検査は毎日対象メニューを5つ選び出して、一般生菌と大腸菌群の検査を始め出しました。
3ヶ月ほど続けていきましたが、問題はありませんでした。しかし、この検査で突き止めたいことは、春になり、暖かくなり、さらに夏に向かって暑くな ってきた場合、どのような傾向になるかです。 4月の半ばを過ぎ、暖かくなってくると、データは少しずつ変化してきました。そして5月に入ってかなり暖かい日になると、問題はありませんが、冬より も数値が悪くなってきました。 そして、6月、蒸し暑い日には、だいぶ悪化の傾向が出て来ました。格レベルではありますが、冬の頃と比べるとだいぶ違います。 そこでこの時点で、これらの製品をどうするか検討をしました。
安全のためには2つ方法があります。保存料を入れるか、危険なメニュー(製品)を夏の間やめるかです。 保存料は顧客ニーズに対応するなら使いたくありません。そこで夏の間和え物類のメニューは製造しないことにしました。
傾向の分析結果
夏の間、和え物類はやめることにはしましたが、DOXの検査は続行します。 最低量のロットを製造し、検査は続行し、年末までのデータを取ることにしました。
やはり夏の間、検査データは良くありません、気温も湿度も高いからです。データは限界内ではありましたが、万一のことを考えると、製品にしない方が 安全です。秋になり、涼しくなってきたら、十分安全なレベルにまで下がってきたので、和え物類を復活させました。データは年末まで取り、一年間の傾 向がわかりました。
データには、検査日の気温と湿度も一緒に入れましたから、季節だけでなく、外気温と湿度との関連傾向が数値で分析できます。
次回は、さらに具体的なDOXの使用例をご紹介します。