第6話 食の歴史を忘れずに

2008.06.01

第6話 食の歴史を忘れずに

忘れてはならないのは、「人間は何を食べ、何を食べないようにしてきたか」という食の歴史への理解と、国内外の食文化の多様性を尊重する生活者の存在です。生産農場で働く人も、食品産業で働く人も、食品の消費者であり、生活者であります。

HACCPは、食品の安全性を確保するための人為的なミスを防止するシステムです。生活者の食品衛生に関する理解度が高ければ、HACCPシステムは食生活の安全性向上と多様化と楽しみをもたらすと期待されます。また、HACCPやそれを組み込んだISO22000は、基本的に自主衛生管理の手段であり、常に見直しを行うシステムです(11)。

「HACCPやISOは、書類棚と額縁の中に飾っています」では、悲劇を招くだろうと心配されます。微生物を征服することはできません。共存共栄が続き、食料不足による微生物との深刻な戦いが生じないことを願って、苦しくても次の世代のために正直を貫いて欲しいと願います。

食品の安全性確保において忘れてはならないことに、

①「最終食品だけではなく、一次生産から最終消費までの、フードチェーンを大事にする」、
②「人の健康に及ぼす影響の大きさ(程度と発生確率)を、客観・中立・科学的にとらえ、情報交換し、その大きさに応じた対策をとること」 

等があります。
さらに大切なことは、嘘をつかないことです。嘘が紛れ込むと全てが台無しになります。食品の衛生管理に嘘が入り込むと、場合によっては、人に死をもたらすことにつながります。

食品取扱者は、その食品安全の第一義的責任(食品安全基本法第8条)を背負っていることを自覚し、食品取り扱いのプロとして自律する必要があります。次の世代を育てることも重要な任務であり、各地の生食食文化も受け継がれて、さらに発展して欲しいと願っています。

 

文献:
11) 日本規格協会:ISO22000:2005食品安全マネジメントシステム要求事項の解説、日本規格協会発行(2006)