第20話 コーデックス食品規格委員会について
2015.11.01
食品の安全性を確保するために食品衛生法では、食品の微生物規格・基準を定めています。我が国の食料自給率は約40%と低く、世界中から食料を輸入して、食生活を営んでいます。国連の食品に関する委員会であるコーデックス食品規格委員会(CAC,Codex Alimentarius Commission)は、地球上のどこでも安全な食品が食べられるように活動を行っています(図1)。1997年には「食品衛生の一般的原則」を採択し、続いて「食品の微生物規格の設定及び適用の原則」を採択しています。我が国の食品微生物規格も、Codex規格との調和、整合性の確保が進んでいます。今回は、Codex食品規格委員会(CAC)についてお話し、次回は食品微生物規格についてお話ししようと思います。
1)Codex食品規格委員会(CAC)の概要
図1のように委員会は、消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として、1963年にFAOとWHOにより設置された国連の政府間機関であり、国際食品規格(Codex規格)の策定等を行っています。我が国は1966年より加盟しています。2015年8月時点での加盟国は、185カ国であり、EUが機関としての加盟を認められています。事務局は、図1のようにローマのFAO本部内に置かれています。
CACには28の部会があります。各部会は、加盟国の中から選ばれたホスト国が運営しています。総会は、2004年から毎年1回開催されています。規格・基準等の最終採択は総会でのみ行われます。執行委員会は、2007年以降は2年間に3回の頻度で開催されています。
一般問題部会では、食品添加物、食品汚染物質、食品表示等、食品全般に横断的に適用できる規格基準、実施規範等の検討が行われます。個別食品部会では、各個別品目の規格について検討が行われています。地域調整部会では、各地域の食品の規格や管理等に関する問題の議論や提言等の検討が行われています。特別部会は、期限を設けて特定議題を検討する部会です。我が国は、バイオテクノロジー応用食品特別部会のホスト国を務めた経験があります(図3)。
CACは、国際的な食品のリスク管理機関として位置づけられており、リスク分析手法の原則に従ってリスク評価は行いません。リスク評価は、FAOとWHOが招集する下記の専門家会合において行われます。これらの会合はCACとは独立した機関であり、専門家が個人として参加しています。
①FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA):食品添加物、汚染物質及び動物用医薬品を担当
②FAO/WHO合同残留農薬専門家会合(JMPR):農薬を担当
③FAO/WHO微生物学的リスク評価専門家会合(JEMRA):有害微生物を担当
2)CACの重要性
貿易についての問題を取り扱う国際機関として世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)があります。国連の機関で、本部はスイスに置かれています。WTOでは、①各国国民の生命・身体の安全や健康の保護と②自由な貿易の推進の協定(SPS協定、注1)が結ばれています。このSPS協定では、WTO加盟国が、科学的見地から行われたリスク評価の結果作られた国際規格に基づかないでSPS措置を行うことは認められていません。この科学的見地から行われたリスク評価の結果作られた国際規格がコーデックス規格であるとされています。
コーデックス規格がある場合、輸入食品に対し自国内での食品の安全のためにとる措置については、コーデックス規格に基づくことが求められます。SPS協定では、WTO加盟国は、「自国の食品安全の基準を国際基準と調和させるよう努める必要がある」とされています。この国際基準とは、コーデックス規格を指しています。
仮にコーデックス規格よりも厳しい規格を輸入食品に課す場合には、その規格に科学的な正当性が示されない限り、非関税障壁と見なされ、WTOに訴えられる可能性があります。
CACで合意される食品規格は、貿易を通じた食品の国際取引のルールとして扱われるようになり、国内で流通する食品の安全管理に大きな影響を及ぼしています。このため、各国とも自国の規格ができる限り反映されるようCAC規格を策定する努力を行っています。
(注1)衛生植物検疫措置の適用に関する協定。Agreement on the Application of Sanitary and Phytosanitary Measures
参考文献:
農林水産省、コーデックス委員会概要
http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/codex/outline.html
厚生労働省、コーデックス規格とWTO協定との関係
http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/codex/09-04.html