第36話 食品廃棄物の飼料としての再生
2017.03.01
今年も2月の節分が終わり、恵方巻が大量に廃棄されたことが報道されました(ダイヤモンド・オンライン他)。我が国の食料自給率はカロリーベースで40%を下回っており、過半数の食料を輸入しています。その一方で図1に示したように、まだ食べられる食料を大量に廃棄しています。廃棄される食品を減らし、廃棄される食品を再利用するために、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(通称「食品リサイクル 法」)が平成13年5月に施行されています。しかしながら、依然として膨大な量の食品廃棄物等が排出され、廃棄された冷凍カツの横流し等の犯罪等も起きています。
食品ロス削減の対応は、我が国だけの問題ではありませんが、図1や2に示されているように、食料不足に陥った国々への世界全体からの援助量を上回る量の食品が、我が国だけで廃棄されている事態は改善されるべきです。EUでは2020年までに食品廃棄物等を半減させるという目標をかかげています。今回は、廃棄された食品を飼料として畜産に再利用する活動に微生物も貢献していることをお話ししましょう。
1)エコフィード(ecofeed)について
“環境にやさしい”(ecological)や“節約する”(economical)等を意味する“エコ”(eco)と“飼料”を 意味する“フィード”(feed)を合成させた造語です。エコフィードは、食品の加工・製造に伴って発生する副産物(醤油粕や焼酎粕等、食品の製造過程で得られる副産物)や売れ残り(パンや弁当等、食品としての利用がされなかったもの)、調理残さ(野菜のカットくずや非可食部等、調理の際に発生するもの)、農場残さ(規格外農産物等)を利用して製造された家畜用飼料のことです。
食品関係事業者は、エコフィードにする食品や副生成物から包装資材等を取り除き、エコフィード事業者に渡します。エコフィード事業者は、食品残さ等から異物を取り除き、成分を確かめて飼料化を開始します。混合、乾燥、サイレージ(発酵)、リキッド(液化)などの作業が行われます。サイレージ(発酵)、リキッド(液化)などの工程で、微生物が活躍しています。油脂などを分解するする必要があるときなどは、加水分解能力の高い酵素を産生するカビ等が配合されることもあります。我が国の飼料の多く(7割程度)は、輸入されています。飼料代は、畜産農家にとって大きな問題であり、国産飼料が高価であることから、エコフィードは貴重な飼料となっています。
2)エコフィードへの挑戦
畜産事業がエコフィードを活用するメリットは、①飼料費の削減、②生産性の向上、③環境保全などです。食品事業者が食品残さ等を飼料化に仕向けるメリットは、①廃棄物処理費の削減、②CSR(corporate social responsibility: 企業の社会的責任)、③環境保全などです。畜産業と食品産業との連携等によって、生産される畜産物をブランド化して販売している例もあります。著者の住んでいる地区の電鉄会社も系列の食品取扱事業者とともにエコフィードに取り組んでいます3)。スーパーやコンビニも取り組みを強化しています。
フードチェーンやフィードチェーンへの理解が進むと、安全な食品が安定的に供給されるようになります。その上、食べられるのに廃棄される食品が減ることになり、環境負荷も減り、次世代の食料生産や調達にも貢献することになると考えられます。
参考文献:
1) 井出留美:コンビニ恵方巻「大量廃棄」問題の解決が難しい事情、ダイヤモンド・オンライン、2017年2月3日、http://diamond.jp/articles/-/116585
2)農林水産省:エコフィードについて、2017年2月
http://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/ecofeed.html
3)髙橋巧一:小田急フードエコロジー事業概要
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/jss/grp/03/bionet_forum2007_2odakyuu.pdf
4)河合亮子:食品ロスの削減に向けてー食べものに,もったいないを,もう一度、化学と生物、
55(3),210-213(2017)