第37話 食品取扱い施設の「色使い」について
2017.04.01
食品取扱い施設では、安全な食品を安定的に消費者に提供するために様々な工夫が行われています。それらの工夫を理解して、食品取扱い施設を管理し続けることが必要です。施設で働く人の食品衛生に関する共通認識を得るために、第1~3図のように、着衣や床、用品などの「色使い」を工夫することも行われています。
「色使い」はO157やノロウイルスなどの病原体やアレルゲン、あるいは異物による交差汚染を防ぐのに役立つだけでなく、さまざまな目的で使用されています。食品取扱い施設での法的規制項目や自主的な管理項目が増えるに従い、管理はより複雑なものになって行きます。「色使い」を工夫することにより、管理は一層分かり易くなり、信頼性は上がります。
1. 「色使い」の工夫で改善が期待される項目
「色使い」を導入するとコストが発生しますが、次のような改善が期待できます。
・食中毒菌やアレルゲンによる汚染の防止。
・食品衛生上の重要な区域と作業の識別。
・法的規制や自主的管理ルールの理解と適正な実行。
・品質保証・管理の効率化。
・外部監査や見学者の理解促進。
・食品の安全性・品質の向上。
・リコール製品回収や食品廃棄の減少、他。
これらの改善により、食品取扱い施設への「色使い」によるコストを上回る利益のみならず、信頼性の向上も得られることが期待されます。
2. 食品取扱い施設への「色使い」の導入
第9話でお話ししましたように、「見える清潔、見えない清潔」を理解して食品取扱い施設は、管理を行うことが必要です。コロニーを作るほど大量に増殖してしまった場合は別ですが、病原体は肉眼では見えません。病原体やアレルゲンは空中に浮遊し、微量でもあっても食品に入り込み、問題を起こすこともあります。
「色使い」は、食品取扱い施設の作業エリアを衛生的かつ機能的に保つのに役立ちます。一般の食品のみならず、食物アレルギー対応食を担当している食品取扱い施設では、有効な予防的管理手段となります。ルール化された「色使い」に従っていなければ、ルール違反に気付き易くなります。青いエプロンを付けた青色の区画での作業に携わる人が、黄色の区画にいると、直ちに是正処置を取ることになります。
「色使い」は、組織としての取り組みを支援するなど、消費者のための食品の交差汚染を防ぐのに役立ちます。すべての区画に固有の「色使い」があり、その「色使い」の意味を誰もが知っていれば、交差汚染の予防がより確実なものになります。
多数の従業員や清掃などの委託業者が働いている大規模な食品取扱い施設では、「色使い」によってシフトやエリア別に衛生管理を明確化することができます。小規模な食品取扱い施設の場合では、従業員ごと、または従業員の役割ごとに「色使い」を工夫できます。「色使い」は、作業の理解と衛生化にも貢献することができます。ヘアネット、履物、作業衣、手袋、マット、コンテナ、テープなども「色使い」ができます。
食品の安全性を確保し、消費者に安定的に供給し続けるには、フードチェーン全体で工夫を行うことが必要です。食品取扱い施設の「色使い」もその一例です。食中毒や食物アレルギーは、食品取扱い施設だけではなく、消費者も含めた全員の「見える清潔、見えない清潔」への工夫が必要です。
【参考文献】
1) V.S. Paolillo: Color Coding: Adding Discipline to a Food Processor’s Preventive Control Program
Food Safety Magazine、 February 21、 2017
http://www.foodsafetymagazine.com/enewsletter/color-coding-adding-discipline-to-a-food-processore28099s-preventive-control-program/
2) 食品産業センター:みんなで守ろう!衛生管理 【紙しばい式 教育ツール】https://haccp.shokusan.or.jp/basis/report/protect/
3) 村上展通:食物アレルゲン管理のポイントとATP+AMPふき取り検査の活用
月刊HACCP、2016年4月号54~62頁
http://biochemifa.kikkoman.co.jp/pdf/j/j_jirei/ph_037_1y160701.pdf#search=%27%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%83%B3+%E7%AE%A1%E7%90%86+%E9%A3%9F%E5%93%81%E5%B7%A5%E5%A0%B4%27
4) ニッポンハム食の未来財団:食物アレルギーのひみつ 10のQ&A、 2016年3月24日刊行、
https://www.miraizaidan.or.jp/public/detail01.html#magazine