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第133話 フローズンチルド食品でも食中毒

2025.04.01

日本食品分析センター学術顧問・北海道大学名誉教授 一色賢司

一色 賢司先生の略歴

http://researchmap.jp/isshiki-kenji/

 春が来ました。桜の花も咲きました。図1は、関西風と関東風の桜餅の全国分布を調べた様子です。わが国は国土が細長い島国であることや四季もあり、各地にそれぞれの旬を持つ食べ物があることなどから、豊かな食文化を持っています。食品の技術開発や交通・流通の発達から、食文化も変化し続けています。

 図1の左下は、九州・大宰府の名物の梅が枝餅です。桜餅は春の季節感を持ちますが、梅が枝餅は大宰府土産として、季節を問わずに焼かれています。焼かれて、冷凍され、各地に出荷されています。

 今年(2025年)の2月、3月は全国各地でノロウイルスを主な病因とした感染性胃腸炎が増加し、亡くなられた方もおられます。米国では、2月に長年にわたるリステリア(Lm)食中毒の原因食品が明らかになりました。患者は38人、死者は12名にもなっていると報告されています。原因食品は、図2のパック入りシェイク飲料でした。このシェイク飲料は、フローズンチルドでした。フローズンチルドとは、製造後冷凍され、保存され、必要に応じて解凍され、その後チルド食品として流通される食品です。フロ・チルとも呼ばれ、生産流通量も増えてきました。冷凍食品であれ、フロ・チル食品であれ、全ての食品には、安全性確保の努力が必要です。

1)シェイク飲料によるLm食中毒

 米国で深刻なリステリア・モノサイトゲネス(Lm)による、死者12人にも及ぶ深刻な食中毒が起きていたことが判明しました。原因食品は、冷凍で出荷・流通されていたサプリメントシェイク(図2)でした。

  患者の多くは長期療養施設で暮らしておられたか、発症する前に施設に一時的に滞在されておられました。米国疾病対策センター(CDC)、各州の衛生当局、および食品医薬品局(FDA)が行った調査によると、2018 年から複数州にわたるLm食中毒の発生があり、調査が行われ、データが収集されていました最終的に、Prairie Farmsが製造したサプリメントシェイクがLmに汚染されており、食中毒を起こしていたと判断されました。

 2月21日現在、患者38 人が 図3のように、21州から報告され、12 人の死亡も報告されています。患者の発生は図4のように、2018年 8月 17日から 2025年 1月 23日までの長い期間に及んでいました。

 患者 38 人のうち、37 人が入院して治療を受けています。実際の発症者数は報告されている数よりも多い可能性があり、より広い地域に報告されていない患者がいる可能性があります。治療を受けずに回復したり、あるいは病院に行ってもLmの検査を受けていなかったりする可能性もあるためです。Lmの発症までの潜伏期間は、3~4週間、長い場合は10週間にも及ぶためです。

 公衆衛生当局は、病気の人から、年齢、人種、民族、その他の人口統計、病気になる前の1ケ月間に食べた食べ物など、さまざまな種類の情報を収集しました。これらの情報に基づいて、感染源の調査が行われました。調査で得られた疫学的証拠から、病人は長期療養施設や老人ホームの入居者であり、感染源はおそらくこれらの施設で提供される食品であることが推定されました。しかし、原因となった食品を特定するには根拠が不十分でした。

 2024年10月に6件の新たな感染が報告され、調査が再開されました。対象製品が特定され、追跡調査で 2025年2月に、 Prairie Farmsの環境サンプルから患者と同一のLm株が見つかりました。

 州の公衆衛生当局は、患者が発症する前の1か月間の食べ物について聞き取り調査を行いました。情報を得た38人のうち、34人(89%)は病気になる前に長期療養施設に住んでいたか、滞在していたと回答しました。8人は、サプリメントシェイクのような柔らかい食事を取っていたと回答しました。サプリメントシェイクが、入居者に提供されていたことは、施設の記録でも確認されました。

 CDCはPulseNetシステムを使用して、発生した疾病を調査しています。CDC  は、食中毒を引き起こす細菌の DNA データベースを管理しています。分離された細菌の DNA は、全ゲノム配列解析 (WGS)が実行されます。WGS により、検出されたLmは遺伝的に密接に関連していることが示されました。これは、患者は同じ食品を摂取して食中毒になったことも示していました。

 Prairie Farms が製造したサプリメントシェイクが、患者に食べられていたことが判明しました。シェイクは製造後、冷凍され、出荷されていました。シェイクは、原因食品としてリコールされました。

2)食品の冷凍と食中毒

 図5は、いちご大福などを食べた99人がノロウイルスによる食中毒を起こしたことを伝える新聞記事です。イチゴからノロウイルスが検出されたという情報は、ありませんが、思い出されるのは、2012年9月にドイツで起こった11,000人を超すノロウイルス食中毒です。表1に、その概要を示しました。この食中毒の原因食品は、中国から輸入された冷凍イチゴでした。

 今日に至っても、第131話のように生鮮あるいは冷凍ベリー類によるノロウイルスやA型肝炎ウイルス汚染問題は、解消されていません。農場から食卓までの、連続した対策が必要です。

 わが国で初めて市販された冷凍食品は、1930年(昭和5年)に戸畑冷蔵(現:日本水産)が発売した冷凍イチゴ「イチゴシャーベー」でした。戸畑(現、福岡県北九州市)は小生の故郷で、昔は活気あふれる漁港でもありました。魚やクジラ用の冷凍倉庫の空きスペースでイチゴを凍らせたのが、始まりだったそうです。

 1998年には、北海道産イクラ醤油漬を原因とする腸管出血性大腸菌0157による食中毒が発生しました。冷凍されたイクラが北海道から出荷され、7都府県で62名の患者を発生させました。2016年には、冷凍メンチカツによる0157食中毒が1都5県で発生し、二次感染者を含めると67名の患者を出しています。

 アイスクリームによる食中毒も発生しており、2015年には米国で3名死亡しています。Lmが原因菌でした。2022年にもアイスクリーム由来のLmにより1名の死者が出ています。

 冷凍は、食品の安全性確保や保存にとって優れた技術です。しかし、技術の使い方を間違えると食中毒を起こすこともあります。

 食品を凍結する場合にも、品質の良い食品を準備し、常に清潔の維持に努めてください。まえがきに記した「梅が枝餅」も焼いて冷凍するまでに、ノロウイルスなどの汚染を受ける可能性があります。加熱後の冷却も清潔に行いましょう

 食品を密封包装せずに、そのまま冷凍すると水分が奪われたり、酸化が起こったりして品質が低下します。また、解凍した食品を再度、凍結すると食中毒を起こすリスクは高くなります。自然解凍を行う場合には、特に清潔の維持に努め、食品の温度を低く保つ必要があります。

 冷凍は、アニサキスやクドアなどの寄生虫対策には有効な手段です。微生物の保存を冷凍で行うように、食中毒菌やウイルスの対策には、冷凍は有効ではありません。技術には、それぞれ長所と短所があります。技術を過信して、不幸を招くことがないようにしましょう。

参考文献:

1) CDC: Listeria Outbreak Linked to Supplement Shakes, February 24, 2025

Investigation Update: Listeria Outbreak, Supplement Shakes, February 2025

https://www.cdc.gov/listeria/outbreaks/shakes-022025/investigation.html

2) 一般社団法人 日本冷凍食品協会 :冷凍食品Q&A、冷凍食品の取扱い、